- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
1 診療の概要
喘息とは好酸球,T細胞,肥満細胞,気道上皮などの細胞や,さまざまな活性化因子が関与する気道の慢性炎症性疾患であり,気道過敏性・気流障害があり,その特徴的症状(主に喘鳴,呼吸苦,咳など)を伴う疾患と定義されている1).病型としては特異的IgE抗体を証明できるアトピー型と,証明できない非アトピー型が存在するが,ともに気道炎症像や気道過敏性は存在する.診断は上記症状の反復性や可逆性気流制限(1秒量・ピークフローの20%以上の変動),(可能なら気道過敏性)などの存在(ほかの呼吸器・循環器疾患などは除外)によりつける.喘息の有病率は1996年度厚生省調査で成人3.2%であるが,15~30歳では6.2%とかなり高く1),当然妊婦でも頻度は高い.妊娠中の喘息の変化は改善,不変,悪化がそれぞれ1/3とされ1),この傾向は経産婦では2回目以降,前回と同様のパターンとなることが多い(70%以上)2, 3).喘息の妊娠への影響は喘息のコントロールがよくなり減少したと考えられるが,カナダの大規模な研究報告4)は喘息患者に早産児,子癇前症,前置胎盤,帝王切開が多いことを未だに指摘している.より安全な妊娠と出産のためには喘息をより安定化させる必要がある.
2 治療の方針
喘息の治療ガイドラインとしては国内の「喘息予防・管理ガイドライン2003」1),国際保健機構(WHO)などが1995年以降のEBMに基づき改訂したGINA 2002(Global Intiative for Asthma 2002 : 日本語版あり,英文はhttp : //www.ginasthma.com/index.htmlよりダウンロード可能)5)などがある.妊娠と喘息に関しては「妊娠中の喘息管理ガイドライン」6)(要約日本語版7))があるが古くなり,The American College of Obstetricians and Gynecologists(ACOG)とThe American College of Allergy, Asthma and Immunology(ACAAI)の合同委員会は,新薬のEBMに基づき2000年に「ACAAI─ACOG position statement(以下,A─A statement)8)」を発表した.その後さらに2005年1月に新しいEBMに基づいた「妊娠喘息GL」の改訂版であるManaging Asthma During Pregnancy : Recommendations for Pharmacologic Treatment─Update 2004(以下[妊娠喘息GL 2004]9),ダウンロード可能 ; http : //www.nhlbi.nih.gov/health/prof/lung/asthma/astpreg.htm)が発表された.いずれのガイドラインも吸入ステロイド(以下,ICS)を中心とした積極的治療を奨励しており,妊娠中といえどもこのことが治療の基本である.GINA 2002 5)は「妊娠中の安全性が明確に証明されていない薬剤でさえも,喘息の最善のコントロールを目的とする使用は妥当と考えられる」とまで述べている.しかし,妊娠時に使用する喘息薬には考慮すべき点もあり,その点については後述する.
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.