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はじめに
心室細動の多くは,心筋梗塞・心筋症などの器質的心疾患に合併して発生するが,これらの基礎的心疾患の合併なしに心室細動(Vf)を来す一群があり,特発性心室細動(Idiopathic ventricularfibrillation:IVF)と総称される.IVFのうちV1-3のST上昇と右脚ブロック様心電図を特徴とする一群はBrugada症候群と呼ばれ,最近特に注目されている1).Brugada症候群は,一般に常染色体優性の遺伝形式をとる遺伝病であるが,de novo即変異を疑わせる孤発例も少なくない.また,罹患率が圧倒的に(80〜90%)男性に多いことは,発症に何らかの修飾因子が関与している可能性を示唆する.
Brugada症候群におけるST上昇のメカニズムとして現在もっとも広く受け入れられているのは,Antzelevitchらの仮説である2).心筋活動電位の第1相を構成する一過性外向きK電流(Ito)の発現は左室よりも右室が強く,特に心内膜側に比べて心外膜側で強く発現しているため,心外膜側の活動電位は持続時間が短く,第1相のノッチが明白である.第1相のノッチの深さはNaやCaなどの内向き電流とItoのバランスで成り立つため,内向き電流が減少するか外向き電流が増加すれば心外膜側の第1相はさらに大きくなり,それに引き続く第2相のドームが消失する.そのため第2相における心内膜・心外膜の電位勾配が増加しSTが上昇すると考えられる.この仮説から,Brugada症候群の原因遺伝子の候補としてItoなどのKチャネル,Naチャネル,Caチャネルなどが挙げられていた.1998年,ChenらはBrugada症候群のいくつかの家系に心筋Naチャネルαサブユニット遺伝子(SCN5A)の変異を報告した3).
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