Japanese
English
綜説
腫瘍血管新生と癌治療の戦略
Tumor Angiogenesis as a Target for Cancer Therapy
小野 眞弓
1
,
桑野 信彦
1
Mayumi Ono
1
,
Michihiko Kuwano
1
1九州大学大学院医学研究院分子常態医学専攻生化学講座医化学分野
1Department of Medical Biochemistry, Graduate School of Medical Sciences, Kyushu University
pp.51-57
発行日 2001年1月15日
Published Date 2001/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902225
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はじめに
従来,癌治療においては癌細胞そのものの殺細胞効果を示す化学療法剤が主流であり,薬剤が先にあって後にその分子標的が明らかになっていった.近年,分子生物学の飛躍的発展で癌やシグナル伝達に関与する分子が明らかになりつつあり,従来の癌細胞を標的にした殺細胞効果を有する化学療法剤に代わってこのような分子を標的にした分子標的治療薬の開発が脚光を浴びている.これらは従来のcytotoxicな化学療法剤に対して一部ではcytostatic drugやtarget based drugとも呼ばれている.先に癌に関与する分子の同定があり,その分子に対して開発された薬剤のことを意味する.転移やシグナル伝達に関与する分子を標的にした薬剤や血管新生阻害薬も分子標的治療薬の一つである.なかでも血管新生阻害剤を使用した治療は“Dormancy Therapy”とも呼ばれており,腫瘍血管新生を抑制することにより腫瘍の増大と転移および転移巣の浸潤を抑制し腫瘍と共存していくことをめざしている.
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