特集 造血器腫瘍
ひとくちメモ
造血器腫瘍と血管新生
山田 健人
1
1慶應義塾大学医学部病理学教室
pp.1481-1483
発行日 2002年10月30日
Published Date 2002/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905264
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固形腫瘍(癌や肉腫)では,血管新生が腫瘍の形成,転移,浸潤に重要であることが明らかとなっている.しかし,これまで造血器腫瘍(白血病,リンパ腫,骨髄腫など)における血管新生の役割については,注目されていなかった.1994年,Vaccaらが,多発性骨髄腫において,骨髄での血管新生と腫瘍の活動性が相関することを報告1),さらにPerez-Ataydeらが,小児ALL (Acute lymphob-1astic leukemia)において骨髄での血管新生の亢進を見出し,さらに治療によりその血管密度が減少するとともに,尿中FGF-2(Fibroblast Growth Fac-tor-2,別名basic FGF)が減少するとの報告2)から,造血器腫瘍における血管新生が注目されるようになり,新たな治療の標的になりうるかを含めて,関心を集めている.本項では,この造血器腫瘍における血管新生の実態とこれまでの知見を概説する.
腫瘍は,その増殖・進展・浸潤・転移のいずれの過程においても血管新生や腫瘍間質形成と密接な関係にある.固形腫瘍が一定以上の大きさに増殖するときには,酸素,栄養の補給と代謝産物の排泄が不可欠であり,新生血管の要求性が高い.例えば血管が新生しない場合の腫瘍の大きさの限度は,約2mmといわれており,癌細胞は新生血管ができることによって細胞死・壊死から逃れられる3).
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