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Hypercapniaにおける酸塩基平衡像の時間的経過
Hypercapniaは呼吸器疾患でしばしば認められる病態であって,その酸塩基平衡像の動態は時間の経過とともに変化すると報告されている.表1と図1はWintersら1)の示した説明で,まず第I相は血液・組織液の物理化学的緩衝作用と緩衝イオンの再配分の時期である.これは10〜20分から1時間ぐらいまで持続する.この時期には図2で説明するように,Hbを高濃度に含む血液は緩衝価が高いので,CO2と反応して多量の[HCO3-]を作る.一方,組織液では低い濃度の蛋白のみが緩衝作用を発揮し,わずかの[HCO3-]しか生成されない.図2に示すように[HCO3-]は血液から組織液に流出し,血液は見掛け上のアチドージスの状態となる2).しかし,これはあくまでも緩衝イオンの再配分によるもので,固定酸の蓄積によるものではない.第II相は細胞内液の緩衝作用が発揮され,外液との間にイオン交換などが起こる過程が1〜2日にわたり進行する.近年は,これに加えて,細胞膜を介する水素イオンポンプの働きが注目されている3).このポンプは少なくとも10種が存在し(図3),膜電位の変化を伴う(electrogenic)ものと伴わない(electroneutral)ものがある.しかし,今日のところ,これらがどの程度生体全体の酸塩基動態に量的に関与しているかはまだ明らかではない.第III相は腎臓による緩衝過程の時期で少なくとも数日以上を要する.この時には尿中への滴定酸とNH3の排泄と引き換えに同じモル量の[HCO3-]が血漿内に回収される.Hypercaplliaではこの過程が亢進し,最終的には酸塩基平衡像の完全な回復が図られる.
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