Japanese
English
綜説
たこつぼ型心筋障害,またはたこつぼ(Ampulla or mphora)心筋症
Ampulla-shaped Ventricular Dysfunction or Ampulla Cardiomyopathy?
河合 祥雄
1
Sachio Kawai
1
1順天堂大学医学部循環器内科
1Department of Cardiology, Juntendo University School of Medicine
pp.1237-1248
発行日 2000年12月15日
Published Date 2000/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902206
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はじめに
突然の胸痛など急性心筋梗塞に類似する症状で発症し,左室心尖部を中心とした広範な可逆性の収縮低下症例が注目されている.広島市民病院の佐藤光らは本例の左心室造影像を「タコツボ型」と形容し1),以降,このユニークなネーミングとも相まって,たこつぼ型心筋機能障害は多くの循環器専門医の注目するところとなっている.この広範な心室無収縮域は,冠状動脈一枝の灌流では説明ができず,急性期冠状動脈造影で冠状動脈が正常であるのは,冠状動脈のspasmが先行したのであろうと解釈され,本病態は多枝冠状動脈のspasrn(攣縮)による気絶心筋2)の臨床例とされた1).佐藤らは1997年の本誌の総説でも,多枝攣縮によるstunned myocardiumと断定している3).本稿の目的は「たこつぼ」型の心室機能障害についての現時点での知見を総括し,その問題点と臨床的意義について明らかにすることである.本病態に関する論文,総説は数えるほどしかなく,しかも,欧米では僅かしか報告がない.たこつぼ症例は未だ十分には知られていない病態であり,各施設での症例数も限られる.このような段階では,少ない自験例に固執し「象を撫でる」弊害に陥るより,主に循環器学会地方会で報告された症例報告の抄録を集計・検討するほうが賢明と考えられる.また,病理所見については実際に検鏡する機会を与えられた生検例,剖検例について略述する.
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