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この度循環器学会による心筋梗塞の二次予防ガイドラインと慢性心不全治療ガイドラインの作成に関与する機会があり,Evidence-Based Medi—cineについて少し考えてみた.Evidence-BasedMedicine(EBM)(科学的根拠に基づく医療)という言葉は1999年7月の朝日新聞,読売新聞にも特集記事としてとりあげられ,一般的に広く知られるようになった.もともと臨床疫学として存在した領域にGordon H Guyatt,David L SackettがEBMと看板を付け替えたところ非常に広まったとされる.EBMに基づく医療は大規模臨床試験に裏打ちされた外部の臨床的根拠のみに依存するように思いがちであるが,EBMの主旨は入手可能な最新の信頼できる根拠を把握したうえで,個々の患者に特有の臨床状況と価値観に配慮した医療を行うものである.したがって,大規模臨床試験の結果を日常臨床に適用するには限界もある.大集団を対象とした臨床試験の結果は個々の患者に特異的な治療法を示すものではない.試験の解析も,無作為割りつけされた症例を対象とするIntention to treatで実施されるため,除外例が含まれているという問題がある.また,治療効果の評価においても死亡率に焦点が当てられているという問題があるが,患者にとっては例えばアンジオテンシン変換酵素阻害薬では咳などの副作用も大きな問題であり,QOLについても重視すべきである.臨床試験では生命予後に替わるべき代替指標(surrogate)として病態の進展過程を示す指標が必要であり,例えば慢性心不全の臨床試験には生命予後に替わる指標として脳性ナトリウム利尿ペプチドが優れた指標となりうることを我々は主張しており,今後の臨床試験の代替指標として検討されるべきであろう.
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