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睡眠時無呼吸症候群をめぐる最近1年間の全般的話題
睡眠時無呼吸症候群に関して,最近1年間のなかで最も話題になった事項は,山陽新幹線の居眠り運転であろう.あの事件で,睡眠時無呼吸症候群に対する社会全体の関心は未だかつてなく高まり,本邦においても睡眠呼吸障害に関連した日中の過剰の眠気などの臨床症状や徴候のため,社会生活全体が受ける影響や損害に対する対策が待たれたが,未だ構築されていないのが現状である.YoungらがまとめたA Popuplation Health Perspective1)によると,Epworth sleepiness scaleにより測定された閉塞型睡眠時無呼吸-低呼吸症候群(obstructive sleep apnea-hypopnea syndrome:OSAHS)の日中の眠気(ESS scores)は,無呼吸-低呼吸指数(apnea-hypopnea index,AHI)が増すにつれて増加するが,各個人によってばらつきが大きいとまとめている.AHIが30以上であっても,ESSが11点以上の異常値を示す患者は35%にすぎない.一般的に慢性的に日中の眠気のある患者は自らの眠気を過小評価することが多い.日中の眠気を感じやすい人と感じにくい人の眠気に対する感受性は個人間で大きなばらつきを持っていると考えられている.
日中の眠気と関連する社会の重要な関心事は交通事故の発生頻度であるが,AHI5以上の交通事故発生頻度のオッズ比は6.3(95%CI:2.4-16.2)とされているが,この報告においては自覚的眠気では閉塞型無呼吸と交通事故歴の関連は説明できていない2).また,運転中に眠気があり,運転中に眠ってしまいそうだと怯えているスペインでの4,000名の検討では,AHI5以上のOSAHSの人の過去5年間の交通事故の発生率は約2倍であったが,有意差はなく,上気道抵抗上昇による覚醒を睡眠呼吸異常として取り入れると,1時間当たり15回以上の異常呼吸がある人の交通事故発症のオッズ比は15以下の人と比較して8.5(95%CI:1.3-62)となっている3).OSAHS患者では交通事故の発生率が高いことは確かであるが,オッズ比の幅が非常に広い.また,自覚的な眠気がOSAHS関連交通事故の説明因子とならないことが事態を困惑させる.多くのOSAHS患者は運転走行に障害を感じておらず,したがって運転時に特に注意を払っていない.OSAHSの重症度が自動車事故にどの程度関与するのか,また事故を起こしやすい人にはどのような特徴があるのかを,プロスペクティブに検討する必要がある1).
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