Japanese
English
特集 大気環境と肺疾患
ディーゼル排気と肺腫瘍発生
Lung Tumor:Genesis Caused by Diesel Emission Inhalation
大山 謙一
1
Ken-ich Ohyama
1
1東京都立衛生研究所環境保健部
1Department of Environmental Health, Tokyo Metropolitan Research Laboratory of Public Health
pp.679-684
発行日 2000年7月15日
Published Date 2000/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902121
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はじめに
大気汚染物質には,光化学スモッグ,一酸化炭素(CO),二酸化窒素(NO2),二酸化硫黄(SO2),浮遊粒子状物質(SPM)などがある.SPMとNO2は未だに改善の兆しがみられない汚染物質である.その理由はこれらの主要排出源がディーゼル自動車排気だからである.ディーゼル車は燃費の経済性から産業界で多く使用され,走行台数も増加し続けている.その結果,ディーゼル排気微粒子(Diesel Exhaust Particles;DEP)がほとんどを占めるといわれる浮遊粒子状物質(SPM)は大都市では環境基準値(0.1mg/m3)を達成できないでいる.また,ディーゼル車から排出されるNO2濃度も横ばい状態で低減できる見通しが立たず,未だに環境基準値(0.04〜0.06ppm)を達成できていない.この改善されないSPMの構成成分であるDEPにはベンゾ(a)ピレンなどの発癌物質が含まれている1).実際にDEP抽出物を繊維に染み込ませてラットの肺に移植すると肺腫瘍が発生する2).しかし,このように単純にDEPは肺に沈着するわけではない.また,NO2も肺腫瘍発生に無関係ではないと考えられている.
本稿では現代の大気汚染の主役であるディーゼル排気と肺腫瘍発生の関係について最新の動物実験データを参考に述べることにする.
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