コーヒーブレイク
脳死と臓器移植
寺田 秀夫
1,2
1聖路加国際病院内科
2昭和大学内科
pp.1756
発行日 1997年12月15日
Published Date 1997/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903592
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脳死臨調から5年半,法案が提出されてから3年余りを経て,ようやく脳死からの臓器移植を認める臓器移植法が,1997年6月17日に成立した.その後,連日この法案に関連して救急医療現場の医師の意見,ドナーカードや移植コーディネーターの問題が新聞紙ヒをにぎやかにし,ややもすると臓器移植時代が到来したような錯覚に陥る人もあるであろう.しかし,あくまでもその根底にある"脳死を人の死と認めるか否か"の問題は,決して解決されたわけではない.ある有名な哲学者は"脳死は人の死ではなく,皮膚は暖かく,静かに呼吸をしている.そして,医師が脳死判定した女性から,2週間後に赤ん坊が生まれたケースもある.そうすると,生まれた子供は死人から生まれてきたことになる.脳死を人の死と定義する考えかたは,疑う余地もなく新鮮な臓器を合法的に早期に取り出すためである"と述べ,脳死を人の死とすることに強く反対している.この考えに同調する医学者や有識者,一般人も多く,自分も全く同感である.また,最近日本大学林成之教授らによる脳低体温療法による脳死状態の患者の蘇生率の向上なども考慮すると,脳死判定はますます慎重にすべきである.
先日の朝日新聞の全国世論調査では,脳死容認者は男46%,女34%で,非容認者はそれぞれ40%,44%とまだ一般に慎重であり,脳死容認者でも2割の人々は法律での規定に反対している.
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