これからの医療と医療制度・23
脳死と臓器移植
寺崎 仁
1
1日本大学医学部医療管理学
pp.2326-2327
発行日 1995年11月10日
Published Date 1995/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402903961
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血液もヒトの重要な臓器の一つであるから,輸血という臓器移植は日本に限らずどの国でも,普通に行われる医療として随分と古い歴史がある.もちろん,宗教上の理由でそれを拒む人も大勢いるが,基本的には社会に受け入れられた医療としてごく一般的に行われている.また,死体腎移植や角膜の移植なども,従来からの「死の定義」を変更することなく十分に対応可能であり,既に社会的にも容認された医療として病に苦しむ多くの患者に福音をもたらしている.さらに,骨髄移植や生体肝移植なども,健康な人の体を傷つける,あるいは家族などに臓器の提供を強いることになりかねない,とする若干の倫理的問題を指摘されてはいるが,おおむね社会に認められた医療として急速に普及しつつある.しかし,今ここで問題にしようとしているのは,「死の定義」を変更しなければならないとされている移植医療,つまり「脳死患者」からの臓器摘出の是非についてである.
「脳死と臓器移植は別の問題として考えるべきだ」とする意見があるが,なぜ現在わが国で脳死の問題が議論されているのかを考えれば,やはり臓器移植との関連を否定するには少し無理があるように思われる.
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