Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
心肺機能を中心とした酸素運搬系のはたらきを総合的に判断する定量的運動負荷試験(Quantita—tive exercise testing:CPX)の重要性が,最近では単に呼吸器や循環器などの患者を対象とした各種の臨床領域のみでなく,健常者やスポーツ選手を対象とした領域でも広く認められつつある1〜6).現在,広く普及しはじめている運動負荷試験のプロトコールは,ramp法と呼ばれる負荷法で(図1a),負荷強度が連続的に一定の率で直線的に増加していくものである1〜8).このramp法には以下のような有用性がある.1回十数分足らずで終了するようなramp負荷運動試験を実施することで,酸素運搬系からみた旧来の運動耐容能の指標:VO2max(もしくはpeak VO2)に加えて,anaerobic threshold(AT),運動強度増大に対して酸素運搬系が適切に機能しているか否かを判定する指標:△VO2/△WR,酸素運搬系の動的側面を評価する指標:VO2の時定数(τ,もしくはmean response time:MRT)の4種の指標が同時に決定できる.なお,これら4種の指標は総称してaerobic parameterと呼ばれている7,8).
近年,Northridgeら9)は幅広い運動耐容能をもつ対象者に適用可能という,STEEP(STan—dardized Exponential Exercise Protocol)と名付けた新しい運動負荷プロトコールを提案した.STEEPは低い運動強度から開始し,1分ごとに直前の負荷強度に対して一定の比率分ずつ上積みして運動強度を漸増していく方法で,負荷の指数関数的な増加法に相当する.Northridgeら9)はSTEEP法の利点として以下の点をあげている.ramp法では,実際の運動負荷試験を適用する現場で,初めて運動負荷試験を受ける対象者に対して,どういった具体的な負荷漸増率を選択すればよいか困難な場合が往々にして存在する.被験者の実際の能力を過大評価してramp負荷勾配を高く設定すると,予想以上に速くall-outになってしまい解析用のデータが十分に得られない.また,逆に過小評価して低く設定すると運動継続時間が長くなってしまい,被験者は生理的な限界以外の例えば運動に飽き飽きする(“boring”)といった理由で運動負荷試験を終了してしまうといった問題点がある.その点,指数関数に従う運動負荷の増加(STEEP)であれば,試験の後半では急速に負荷が漸増するために(図1b),仮に被験者間に大きな体力水準の違いが存在しても,all-outになる運動終了時刻にはそれほど大きな違いはないので,ramp法に存在する,初めての被験者に対する負荷勾配の選択をどうするかといった問題を回避できる.しかしNorthridgeら9)は,VO2max以外のaerobic parameterの測定については一切触れていない.
そこでわれわれは,健常者を対象としてramp法とSTEEP法を実際に施行し,4種のaerobicparameterのそれぞれがSTEEP法で測定可能であるか否かといった点,もし測定可能であるとすれば,ramp法で得られた値との問に差異があるか否かといった点を検討することにした.
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.