Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
日本胸部疾患学会(現・日本呼吸器学会)肺生理専門委員会による『慢性閉塞性肺疾患・気管支喘息の診断と治療指針』1)によると,慢性気管支炎の定義(概念)は「気管支を中心とした気道の慢性炎症により長期にわたり咳,疾,特に疾が持続する疾患であり,他の心肺疾患や耳鼻科的疾患によらないもの」となっている.タイトルとして与えられた「日本の慢性気管支炎の診断基準」とはこの指針の内容を表していると考えて論を進めることにする.さて,このなかで述べられている「長期」とは,Fletcherの基準およびBritish Medi—cal Research Council(BMRC)の1965年の基準に用いられている「2年以上連続して少なくとも冬季に3カ月以上毎日みられること」である.しかし,「2年以上」「3カ月以上」といった数値の)根拠は明らかではないようである.この定義によれば,慢性気管支炎の診断は臨床症状によって為される.したがって,肺機能上の閉塞性障害(airway obstruction)は必須事項ではない.上記の定義に合致し,しかも閉塞性障害のない例を単純性慢性気管支炎(simple chronic bronchitis)とし,閉塞性慢性気管支炎(obstructive chronicbronchitis)と区別することがある.慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary dis—ease:COPD)や慢性肺気腫との関係については後述するが,Sniderは図のごとき概念を記している2)(図1).
このように本邦においても,Fletcherが提唱しBMRCが定めた慢性気管支炎の定義に則って診断基準が出版されており1),かつ広く用いられているものでもあり(世界的にも),この診断基準を積極的に変更する理由は今のところないものと考える.ただし,問題点はある.冒頭の定義の文に戻ってみると,その後半に「他の心肺疾患や耳鼻科的疾患によらないもの」という条件が付随している.日常の臨床やマス・スタディなどではこの部分,すなわち除外診断・鑑別診断が大いに問題になってくる.
したがって「日本の慢性気管支炎の診断基準はこれでよいのか」という設問に対しては「これでよい」(「これでいこう」)と答え,ただし,除外診断・鑑別診断の重要性・必要性を強調したい.そこで以下に,慢性気管支炎と鑑別すべき疾患とその主な鑑別点を主体として解説する.
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.