巻頭言
人の寿命と社会問題
西野 卓
1
1千葉大学医学部麻醉学
pp.323
発行日 1999年4月15日
Published Date 1999/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901872
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我が国では出産数の減少により,やがて人口低下の危機があると叫ばれている.確かに,少子高齢化の社会は多くの問題を持っている.しかし,人口低下は必ずしもマイナスの面だけではなくプラスの面も存在するはずである.そもそも我が国は国土が狭く,その割には人口は多いのである.事実,不景気といっても休日の行楽地は人で溢れ,高速道路は渋滞する.平日での首都圏のラッシュアワー時の混雑ぶりは並ではない.もしも我が国の人口が現在の半分ぐらいで,現在の生活水準が保たれるならば,我が国は世界で一番住みやすい国になるなどと考えるのは私だけであろうか.
もちろん,現実は厳しい.若年者の人口低下は労働人口の減少を意味し,彼らにのしかかる社会保障や税金などの負担が増えることは度々指摘されていることである.人口が低下した状態で現在の生活水準が保たれる保証もない.しかし,地球規模でみた場合,世界の人口は爆発的に増加しており,近い将来,エネルギーや食料の不足問題が生じることは目に見えている.事実,世界の人口の2/3は飢えているといわれている.
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