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最近の動向 多数の疫学調査の結果から,狭心症,心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の患者は高比重リポ蛋白(HDL)分画のコレステロール値が低下しており,HDLは抗動脈硬化作用を有するリポ蛋白と考えられる.HDLは末梢組織に蓄積した余剰のコレステロールを引き抜き,それを肝臓へ逆輸送して処理・排泄する機構,すなわちコレステロール逆転送系において,コレステロールの運び役として中心的な役割を果たしている.コレステロールエステル転送蛋白(CETP)は,Lecithin:cholesterol acyltransferase(LCAT)反応によって遊離コレステロールがHDL上でエステル化されて生じたコレステロールエステルを超低比重リポ蛋白(VLDL),低比重リポ蛋白(LDL)などのアポ蛋白B含有リポ蛋白へと転送させ,これらのリポ蛋白がLDL受容体により肝臓に取り込まれて代謝される.さらに,アポ蛋白Eを含有するHDLが肝臓のLDL受容体を介して取り込まれる経路に加えて,HDLのコレステロールエステルが選択的に肝臓に取り込まれる経路の存在が明らかになってきた.この肝臓におけるHDLの受容体が最近クローニングされ,マウスではScavenger receptorclass B type I(SR-BI)(Acton S, et al:Identification of scavenger receptor SR-Bl as a highdensity lipoprotein receptor.Science 271:518-520,1996),ヒトではCLA-1(CD 36 and LIMP IIanalogous-I)と呼ばれている.SR-BI mRNAは肝臓,副腎などで検出され,in vitroの実験結果からHDLが本受容体に結合すると,HDL粒子自身は細胞内には取り込まれずに,HDLの中心部にあるコレステロールエステルのみが選択的に肝細胞に取り込まれることが示されている.また,invivoの実験結果から,本受容体は血清HDLコレステロールのレベルを強く規定する因子であること,コレステロールの引き抜きに関与する可能性もあることが明らかになってきており,本稿ではSR-BIに関する最近の文献を紹介する.
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