- 有料閲覧
- 文献概要
最近の動向 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndronne, OSAS)は潜在的な有病率が高く,米国で行われた大規模な疫学調査によると,少なく見積もっても成人(30〜60歳)男性の4%,女性の2%に達するといわれる.さらに,中等症〜重症(1時間当たりの無呼吸が20回以上)になると生命予後が著しく低下し,7〜8年後の死亡率が20〜30%にも達するという報告がある.その死亡原因の多くは虚血性心疾患や脳血管障害とされている.OSASとこれら致死的な血管障害との因果関係は明らかでないものの,米国の睡眠障害の専門家は公衆衛生学上の大問題として注意を喚起している(National Commission on Sleep Disorders Reseach, Wake up America:anational sleep alert, Washington, D.C.:Govermnent Printing Office,1993).Wake up Americaは次のように述べる,“30〜60歳のアメリカ人の11,845,000人はOSASに罹患している.そのうちの4分の1(3,029,000人)は何らかの治療を必要とする中等症から重症である.65歳以上の老人ではさらに頻度が高く,3,100万人のうち7,440,000人はこの疾患に罹患しており,そのうちの46%は中等症から重症である.OSASの影響は甚大であり,高血圧症,冠動脈疾患,心筋梗塞,肺高血圧症,うっ血性心不全,脳卒中,精神・神経障害,知能障害,性機能障害,事故など広汎に及ぶ.OSASが原因となる心血管死は年間38,000人と推定される.この疾患の患者は著しい眠気のために家庭生活,社会生活に適応できず,しばしば怠け者と誤解されて社会的に隔離される.無治療のOSAS患者は7倍も交通事故を起こしやすい.小児の患者ではしばしば学習障害や行動異常の原因となる.”これらの記述は一流の医学雑誌に掲載された文献に基づいてはいるが,それらの客観性は必ずしも確かなものではない.また,論旨に合わない文献のいくつかを無視していることも確かである.この領域の専門家は“Wake up Annerica”の真偽を厳密に検証しなければならない.また,“アメリカ人の真実”は必ずしも“日本人の真実”ではないことも銘記すできであろう.
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.