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はじめに
Lower body negative pressure(LBNP;下半身陰圧負荷)とNeck suctionは,航空宇宙医学の領域で微小重力(microgravity)下の循環調節における圧受容体反射機序を解明する試験法として開発された1〜4).
生体は重力のもとでは静水圧(hydrostaticpressure)の影響を受け,体位変化により血液移動が生じ血圧が変化する.元来,圧受容体反射は種々の要因による血圧変化を干渉し,重要臓器への血流を恒常的に維持する機構の主体をなすものであり,体位変化に伴う体液再分布においても重要な役割を演じる.その機能評価は,日常臨床では起立試験やHead-up tilt試験で行われるが,航空宇宙医学では,下半身を陰圧下に晒すことで静脈還流を制限し,臥位の状態で立位における静水圧の影響(下半身への血液貯留)を模擬する方法としてLBNPを採用している.つまり,LBNPは起立性負荷試験の一つであり,起立に伴う心肺および動脈圧受容体反射を介する神経体液性循環調節や起立耐性の評価に用いられる.またLBNPは,宇宙空間に滞在する宇宙飛行士に対して,地球に帰還後の起立耐性低下4)を予防する目的で持続的な静脈還流増加を阻止するcounter—measureとしても用いられている.
一方Neck suctionは,動脈圧受容体の一つである頸動脈洞圧受容体を選択的かつ非観血的に刺激する試験法として,1957年にErnsting5)によつて開発された.本法は,総頸動脈の血圧変化に反応する頸動脈洞圧受容体反射の機序解明や,高血圧,心不全などにおける圧受容体反射感受性評価に用いられている.さらに今日では心臓迷走神経機能評価法への応用も試みられている.
ここでは,LBNPおよびNeck suctionによる圧受容体機能評価について,両者における生理学的機序と臨床への応用,さらに心血管系疾患における圧受容体異常について述べる.
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