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特集 循環器の大規模臨床研究—臨床治験を見直す
わが国の大規模臨床研究の現況—JAMPの経験をふまえて
Present Status and Matters of Megatrial in Japan
深見 健一
1
,
平盛 勝彦
1
Ken-ichi Fukami
1
,
Katsuhiko Hiramori
1
1岩手医科大学医学部第二内科
1Department of Internal Medicine II, Iwate Medical University School of Medicine
pp.1051-1056
発行日 1997年11月15日
Published Date 1997/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901581
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医療は個別的,実践的,多面的であると同時に,客観的,論理的,分析的な科学としての医学に立脚しているものであり,治療法の選択には正当な根拠がなければならない.薬物療法に限らず,治療法の評価に関わる因子は多様で決して単純ではない.発病とその後の病態の進行過程は個々の患者ごとに異なり,環境因子,自然治癒力,心理的要因,同時に行われた他の治療法などが複雑に関与するからである.大規模臨床研究は治療法選択の正当な根拠を,科学的で公正な立場から求めようとする一つの方法であり,その重要性は広く認められているところである.欧米での薬効評価のための大規模臨床研究のはじまりは1960年代にさかのぼり,これまでに各種の薬剤や治療法について信頼性の高い大規模臨床研究が盛んに行われ,なかには正しいとされてきた治療法を覆すほどの結果を得ているものもある.それにひきかえ,わが国では多施設共同大規模臨床研究による各種治療法の客観的評価に関する成績は皆無である.欧米の成績を基にして治療を行い,欧米人での評価基準を,人種や臨床背景の違いを無視して,それぞれがよしとするところを用いているのが現状である.生命予後やQuality ofLifeの改善を目的とした長期の治療法など,人種や臨床背景の違いが大きく影響するであろう問題についても同様である.
薬効評価に関する国際ハーモニゼーションが叫ばれ,既にその国際会議(International Confer—ence on Harmonization:ICH)が開催されている今日,わが国の臨床研究の現況を整理し,今後の展望を検討すると,いままさに行動を起こすべき時期といえる.
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