Japanese
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特集 呼吸循環系の順応と適応
宇宙飛行による心肺系への影響
Effect of Space Flight to Cardiopulmonary System
関口 千春
1
Chiharu Sekiguchi
1
1宇宙開発事業団筑波宇宙センター医学室
1National Space Development Agency of Japan, Medical Research and Operations Office
pp.983-994
発行日 1997年10月15日
Published Date 1997/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901569
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はじめに
宇宙飛行の初期の時代から宇宙飛行士が,飛行後,地上に帰還するとうまく立つことができず,歩行もままならないことがわかっていた.これはいわゆる飛行直後の平衡機能の問題も関与しているが,それよりむしろ宇宙飛行による循環器系の失調であるcardiovascular bdeconditioningといわれる起立耐性の低下の結果であった.この起立耐性低下の原因には体液シフトからくる体液量の低下だけでなく,循環器系の神経調節機構の変化など種々の要因が関与しているといわれており,シャトルを操縦するパイロットにとってはin—capacitationの可能性もあり重要である.
一方,肺の換気血流比分布は地上では重力の影響を受け,肺尖部の換気血流比分布は肺底部のそれとは異なるということはよく知られた事実である.しかし,宇宙は無重量状態(正確には微小重力状態またはμGという)であり,肺尖・肺底部での血液分布の差はなくなり地上とは異なった状態と考えられる.幸いこれまでこのμGによる呼吸器系への影響として起立耐性低下のような有意な問題は起こっていない.しかし,長期滞在時の呼吸系への影響については未だその問題点も十分に把握されておらず,今後さらなる研究が必要である.
本稿ではこれまでの宇宙飛行の結果を踏まえ,さらにベッドレストなど地上の模擬実験で得られた結果などを交えて宇宙飛行の呼吸循環系への影響などについて述べる.
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