Japanese
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特集 手法が確立するまで—血液ガスと呼吸管理の領域から
膜型人工肺
Membrane Oxygenator
北野 良博
1
,
宮坂 勝之
1
Yoshihiro Kitano
1
,
Katsuyuki Miyasaka
1
1国立小児医療研究センター病態生理研究室
1Pathophysiology Research Laboratory, National Children's Medical Research Center
pp.943-946
発行日 1996年9月15日
Published Date 1996/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901329
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膜型人工肺の開発と種類
人工肺は当初,静脈血に直接酸素ガスを吹き込む気泡型と,血液を薄層にして酸素と接触させるフィルム型の2種類であった.フィルム型は小型化が困難で,現在では全く使用されなくなっている.これらの人工肺では血液とガスが直接接触して静脈血のガス交換が行われるのに対し,膜型人工肺では血液が直接ガスに触れずに薄いガス透過膜を介してガス交換を行うので血漿蛋白の変性や赤血球・血小板の障害,気泡混入などが少なく,より生理的で,長期間の使用も可能である.現在わが国では,使用時間が比較的短い開心術時の体外循環に限っても,その90%以上で膜型人工肺が使用されている.
膜型人工肺の可能性を最初に指摘したのは,Kolffとされている.彼は人工腎臓の実験中にセロファンチューブの中を流れる静脈血が赤くなることに気付き,セロファン膜を介して静脈血の酸素化が行われることを1944年に報告し,その後ポリエチレン膜で人工肺を試作した(1955).その後膜素材としてエチルセルロース,テフロンなども使用され,改良が積み重ねられた.当初は膜のガス透過性が不十分であったが1960年代に入って優れた膜素材が次々と開発され,シリコン膜積層型のLande Edward肺やシリコン膜コイル型のKolobow肺などが市販されるようになった.
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