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人間の肺のガス交換効率を規定する主たる因子は換気・血流比(VA/Q)であり,VA/Qの不均等分布が肺内ガス交換障害を説明する重要な生理学的要因であると考えられている.1940年代から50年代にかけてFenn,Rahn,Riley,CournardらはO2,CO2など生理的ガスを用いて肺胞レベルにおけるガス交換に関する研究を発展させた.しかし,O2,CO2ガスはヘモグロビンを介する相互作用や血液解離曲線の非直線性といった性質を有しているため,これらのガスを指標として肺内VA/Q分布を解析する場合にガス交換動態を検討するだけでも複雑な数学的処理を必要とする問題点がある.この問題点を解決することを目的として,1967年にYokoyama,Farhiらが生体内で代謝されたり,ヘモグロビンに結合して複雑な移動動態を示すことのない数種の不活性ガスを指標ガスとして用いる多種不活性ガス洗い出し法を開発した.すなわち,メタン,エタン,笑気を指標ガスとして洗い出しを施行し,相異なるVA/Qを有する2つのコンパートメントからなる肺模型でVA/Q分布を定量的に評価する方法を報告した.この方法は指標ガスのガス交換動態を簡単なHenryの法則で表現できること,また指標ガスの濃度が微量であるがゆえに指標ガス間の相互作用や生理的ガスのガス交換過程への影響を無視できること,さらには広範な血液ガス分配係数を有する多種不活性ガスを同時に用いることにより肺内VA/Q分布の異常に高い検出能力を発揮できることなど優れた利点を有している.この原法を基礎に1974年Wagnerらが6種の不活性ガスの洗い出しデータから50個のコンパートメントよりなる肺模型でVA/Q分布を評価する方法を発表した,本法では後述する解釈の面での問題もあるが,比較的安定したVA/Q分布に関する“代表的な分布”が求まり,各種疾患のガス交換に関する病態を視覚的に説明するという魅力を持っているのでこの方面の研究には広く応用されている.以下に各種疾患におけるVA/Q分布の例を挙げる.
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