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はじめに
戦後,わが国の臨床肺機能が飛躍的に発展したが,その糸口となったのがベネディクト・ロス型スパイロメーターである.1952年,故笹本浩先生(当時慶大助教授)が米国留学より帰国され,ベネディクト・ロス型レスピロメーターをわが国にはじめて導入された.わたしは笹本先生が留学中に綿密にメモした先生のノートを唯一の頼りに器械の整備をした.当時は海外の文献など容易には入手できなかったのである.器械の整備とともに,市河,建部,泉工舎など医療機械メーカーを呼び,国産化を急がせた.その試作第1号機は外科の石川七郎先生(当時慶大助教授,後に国立がんセンター総長)に買っていただいた.なお,レスピロメーターとは米国コリンズ社の商標登録名で,スパイロメーターが一般名である.その後,スパイロはいろいろと改良され,わたしはチェスト社よりユニスパイロを開発した.これについては後述する.しかし,電子技術の進歩,マイクロコンピュータの普及はスパイロの様相をすっかり変えてしまった.ベネディクト・ロス型レスピロメーターにはじまる機械式スパイロを電子式スパイロに置き変えてしまったのである.すなわち,熱線流量計あるいはニューモタコグラフで呼気流速を測り,これを電気的に積分して容積を算出する方法である.また,マイコンの普及と相俟って,肺気量諸量,1秒量,1秒率,フローボリウムなど数多くの指標を自動的に演算し,プリントアウトできる.かつてわたしたちがベル・ファクターだ,BTPSファクターだと計算尺で苦労した事柄は,すべて器械がやってくれる.現在では日常の肺機能検査は電子式スパイロが広く普及し,機械式スパイロは全く姿を消してしまった.以下,ベネディクト・ロス型スパイロにはじまるスパイロの進歩の歩みとベネディクト・ロス型スパイロの栄光ある消滅について述べる.
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