Japanese
English
特集 肺機能検査による病変部位診断の可能性
フローボリューム曲線
Flow-volume Curve
長尾 光修
1
Koshu Nagao
1
1獨協医科大学越谷病院呼吸器内科
1Department of Respiratory Medicine, Koshigaya Hospital, Dokkyo University School of Medicine
pp.569-574
発行日 1996年6月15日
Published Date 1996/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901264
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はじめに
Flow-Volume曲線(F-V曲線)から病変の部位診断を行い得るのは,ごく限られた場合であろう.上気道,気管は単一導管であり,その病変は比較的診断しやすい.しかし,左右主気管支の何れかに病変が生じF-V曲線に異常がみられても,気管支は並列であり左右の病変局在診断は不可能である.病変部位がさらに葉気管支,区域気管支へと末梢にさかのぼるにしたがってますます病変の局在診断は困難となってくる.また,上気道と気管の病変は比較的検出しやすいとはいえ,F-V曲線の典型的パターンは病変がより進行した患者から記録されたものが多く,早期診断に役立つことは少ないのが実状であろう.F-V曲線による障害部位診断が難しい理由の一つは,気道が一般に2分岐型で,およそ16分岐で呼吸細気管支に至る並列モデルであり,各分岐の合流点では各コンパートメントからの流量間にinterdependenceが存在すること1).また,健常者の末梢気道(直径2mm以下)抵抗はその全肺抵抗に占める割合が15%と低く,同部位の軽度の抵抗変化を検出することが困難なためである2).しかし,慢性肺気腫や気管支喘息などの患者では,一度肺病変が顕性化すると,その細気管支部位の抵抗は全肺抵抗の50〜56%を占めることになる3).F-V曲線には呼吸筋力,肺胞,気道系のすべての情報が含まれるため,その判読には特定部位の値のみならずピーク値の低下,曲線の平坦化,notch,鋸歯状波形など曲線全体の形状の変化を注意深く観察することが必要である.
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