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解説
在宅治療用ベンチレーターの必要条件
Requirements of Home Ventilators
石原 傳幸
1
,
川城 丈夫
1
Tadayuki Ishihara
1
,
Takeo Kawashiro
1
1国立療養所東埼玉病院
1Department of Internal Medicine, National Higashisaitama Hospital
pp.561-567
発行日 1995年6月15日
Published Date 1995/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901067
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在宅人工呼吸器治療の沿革
在宅人工呼吸器の一つである体外式陰圧人工呼吸器の原型は1929年にアメリカで開発された「鉄の肺」である.1938年頃からのポリオの大流行によって呼吸不全患者が多発し,「鉄の肺」の応用・長期人工呼吸器治療およびその在宅管理が促された.「鉄の肺」は器械が大きく広い場所を占拠すること,また患者の頭部以外の全身が呼吸器の中に入るために介護がし難いなどの欠点があった.「鉄の肺」に代る,現在の体外式陰圧人工呼吸器がイギリスおよびアメリカで考案された.これらはその後もポリオ呼吸不全治療に使われていた.1970年後半になり筋ジストロフィーを含む神経筋疾患呼吸不全治療に体外式陰圧人工呼吸器が応用されるようになり,再び注目されるようになった.
わが国でも,神経筋疾患の入院患者の気管切開を行ったうえでの陽圧人工呼吸器治療が20年以前でも少数ながら行われていた.しかし,当時の人工呼吸器は高価であり台数も少なかったことなどから限られた患者でのみ治療が可能であった.また,回復の見込みのない患者に気管切開を行うことに対する疑問や,長期にわたって高価な呼吸器を独占してしまうことなどの事情から,神経筋疾患呼吸不全患者の人工呼吸器治療は行ってはいけないという漠然とした意識もあった.われわれもこのような症例に気管切開することには躊躇があった.筋ジストロフィーを含む神経筋疾患患者の気管切開を伴わない体外式陰圧人工呼吸器治療の1970年代後半からの米国の成績は体外式陰圧人工呼吸器のわが国への導入を動機づけた.気管切開をしない治療法ならば日本の社会にも受け入れることができると考えた.
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