特集 ベンチレータと生きる人々—求められる地域生活支援
ベンチレータ使用者の生活を支えるために必要な視点
松井 和子
1
1国立看護大学校
pp.145-150
発行日 2002年2月1日
Published Date 2002/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661903902
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ベンチレータ使用者という捉え方
“ベンチレータ使用者”とは,日本の看護職にとって使い慣れた用語ではない.多くのナースにとって人工呼吸器は生命維持装置であり,その装置を必要とする人は“患者”である.しかも集中的なケアが必要で,1日の大半をベッド上で過ごす人工呼吸器に依存した患者である.多くは気管切開による人工呼吸で,音声コミュニケーションが困難であり,ナースは家族を介して患者と間接的にコミュニケートしているのが現状である.そのような患者は人工呼吸器,すなわちベンチレータの使用者,言い換えればベンチレータ・ユーザーという表現からほど遠い存在であろう.
ベンチレータ・ユーザーとは,呼吸ケアの先進国で人工呼吸器を使用する当事者がみずからの主体性を主張し使い始めた用語である.その用語をナースが使い始めたのはデンマークの調査報告書が最初ではないだろうか.“ベンチレータ使用者(ユーザー)”は,デンマークにおける在宅ベンチレータ使用者を対象とした全国調査の報告書(1994年)で次のように定義された1).「人工呼吸器を1日中,あるいは数時間,継続的に必要とし,かつ入院ケアを必要としない人」.その定義によると,ベンチレータ使用者とは入院ケアを必要としない,言い換えれば地域で生活する人である.
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