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綜説
社会生活における肺癌のリスク・ファクター
Risk Facturs for Lung Cancer in Our Living Envirament
香川 順
1
Jun Kagawa
1
1東京女子医科大学衛生学公衆衛生学
1Department of Hygiene & Public Health, Tokyo Women's Medical College
pp.321-328
発行日 1994年4月15日
Published Date 1994/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900841
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はじめに
社会生活における肺癌のリスク・ファクター(危険因子)を評価することは,いうまでもなく,肺癌を引き起こす発癌因子に,社会生活の中で,どの程度の濃度の暴露を受け,その結果,肺癌の罹患リスクが,どの程度あるかを評価することになろう.
しかし,この評価は,以下に述べるいくつかの理由から極めて困難である.第1は,発癌因子への暴露から発癌に至るまでの潜伏期間は通常10〜30年であるので,問題とする因子への10〜30年間にわたる暴露量の評価が極めて困難であること.したがって,現在の暴露量を測定しても,現在までの蓄積された暴露量を評価することは困難であること.第2は,対策が不十分であった時代にみられた高濃度暴露で観察された職業性肺癌に関する量-反応関係を,現在の低濃度暴露に外挿することに問題があること.第3は,肺癌の発生に関与する危険因子が,問題としている危険因子以外にいくつか存在している場合が多いために,そのようないわゆる攪乱因子を十分に調整しないと,問題としている危険因子の寄与度を評価することが困難であること.第4は,問題とする危険因子そのものの量では発癌への寄与が少なくても,他の因子,例えば喫煙が加わると喫煙と相加〜相乗効果が期待されること.第5は,動物実験結果を人に外挿することには多くの未解決の問題が残されていること.
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