巻頭言
臨床研究の行方
大谷 信夫
1
1金沢医科大学呼吸器内科
pp.311
発行日 1994年4月15日
Published Date 1994/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900839
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20世紀が人類の歴史にとってどのように位置付けされるのかは中国の知恵に従えば100年後のこととなる.しかし,現在が単に時間的な関係よりも史実として20世紀と21世紀の節目にあるらしいことは世界中の多くの国々の多くの人達が感じていることらしい.私たちの係っている日本の医学界もこの“時流”の影響を免れるものではない.大学院大学の設置,大学設置基準の改革,特定機能病院を頂点とした医療機関のシステム化の構想などが生まれた裏には従来の「日本型」とか「日本流」といった考え方,社会慣習などの変革が要求されており,新しい流れなり基準なりを自らの手で創造していくことが要求されているように思える.これらの変化の中心にあるものは「自由化」という発想と捉えることは大雑把に過ぎるかもしれない.けれどもベルリンの壁の崩壊以前の思考の形式がなにかにつけて対立構造の中で行われたのに対して,彼地での「自由化」の具現の余波は社会・経済・政治構造をはじめ人間社会のあちこちに大きな変化を要求するようになったのは事実であろう.
研究を象牙の塔の中の出来事というのは余りに古い捉え方であろうが,それでも何を研究の対象とするかは研究者の自由に任せられるべきだという考えは現在でも多くの研究者の主張せんとするところであろう.しかし,自由化の波の中にあっては,まず研究の経済性が問われざるをえず,研究のあり方は研究体制の合理化というコントロール下におかれることになる.
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