Japanese
English
特集 循環器疾患と遺伝子
Angiogenesisと遺伝子
Angiogenesis and Gene
今村 道博
1
,
後藤 勝年
1
Michihiro Imamura
1
,
Katsutoshi Goto
1
1筑波大学基礎医学系
1Department of Pharmacology, University of Tsukuba School of Medicine
pp.213-217
発行日 1991年3月15日
Published Date 1991/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900234
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はじめに
発生の途上にあるものは別として,血管新生(an-giogenesis)が健康な成体において観察されることはほとんどない.血管新生は特殊(病的)な状況下,例えば,炎症や創傷の治癒,また固形腫瘍の増殖や転移において見られる特異な現象である.特に,固形腫瘍の形成は血管新生に依存していることが指摘されており1),癌治療という観点からも血管新生の機構解明は重要な意味を持つ.
生体内で癌化した細胞が増殖し,固形腫瘍として成長するためには腫瘍内部への栄養血管の引き込みが必要となる.血管新生は,まさにこの栄養血管の構築を意味している訳であるが,どのような機序によって,これがなされるのであろうか.じつは,これは,癌細胞から血管新生因子(angiogenic factor)と呼ばれる物質が分泌され,癌細胞周辺に存在する血管内皮細胞が刺激された結果生じると考えられる.この因子が癌細胞周辺の細静脈,または毛細血管を構成している血管内皮細胞に作用すると,血管内皮細胞は自らを組織に固定している基底膜を酵素によって破壊し,次に遊走,増殖を行いながら因子の分泌源に向かって伸長していく.そして増殖した内皮細胞は互いに配列を整え,基底膜を再構築し血管を形成すると考えられている.
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