整形外科/知ってるつもり
運動能力と遺伝子—チャンピオン遺伝子
森 秀一
1
1東京都健康長寿医療センター研究所・老年病態研究チーム・運動器医学
pp.252-254
発行日 2015年3月25日
Published Date 2015/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408200147
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■はじめに
2020年の夏季オリンピック開催地が東京に決定し,将来の代表候補である中学生や高校生アスリートの活躍に注目が集まっている.ジュニア世代のトップに上り詰めた彼らの競技パフォーマンスの源が日々のトレーニングであることは間違いないが,果たしてそれだけであろうか.多くの人は「トップアスリートは『素質』が違う」と考えるかもしれない.この「素質」,つまり遺伝的要素が運動能力を左右する大きな要素であることは,走行能力に基づいて選択交配を繰り返す競走馬の世界で端的に示されている.ヒトの運動能力においても遺伝的要素の関与は十分に考えられており,その生理学的な根拠として最大酸素摂取量,心臓容積,骨格筋の筋線維タイプ組成,筋力や体格などが遺伝的要因の影響を受けていると報告されている2).約30億塩基対からなるヒトのDNAは99.9%が共通の塩基配列を有しているが,残りの0.1%が個々人で異なる.遺伝子上に存在するこのようなわずかな違いが,競技パフォーマンスにおいても多様な表現型の1つとして反映されると考えられている.さらに近年は分子遺伝学的方法の発展により,競技パフォーマンスに影響する原因遺伝子の探索が進められてきた.
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