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はじめに
急性心筋梗塞の発症機序については,いまだ未解決の面が残っている1,2)。しかし発症後4時間以内に冠動脈造影(CAG)が行われている症例では80%以上の割合で血栓に基づく支配冠動脈の完全閉塞が存在するが,発症12〜24時間後にCAGが施行されているものでは,これが65%内外へ誠少しているとの臨床的観察がある3)。したがって急性心筋梗塞では経過中比較的早期に血栓の自然溶解が生じ,冠血流が部分的に再開されることはまれでないと思われる。急性期に血栓溶解治療が行われることの多い昨今ではその確率はさらに高いものと考えられる。このように梗塞関連冠動脈に部分的な再開通が生じたものでは,梗塞予定領域に壊死・線維化を免れえた心筋が残存していることが多く,そのため後に狭心症を残したり,梗塞の再然を生じることが稀れでない。いわゆるQ波を伴わない心筋梗塞(non-Q-waveinfarction)はその典型4)であるが,Q波を伴うもの(Q-wave-infarction)でも同様の状況が形成されることもあろう。これらの症例では陳旧期に薬物治療の他,梗塞関連冠動脈に対しバイパス術(CABG)あるいは経皮的冠動脈形成術(PTCA)などの積極的治療を駆使して冠血流を充分に確保し,支配領域内の残存心筋を救済することが臨床的に要求されている。したがって陳旧性心筋梗塞(OMI)を管理する際に心筋viabilityの評価は不可欠なものとなりつつある。
現状での心筋viability評価は主として局所心室壁の収縮・拡張動態,血流分布およびglucose代謝などを参考にして下されており,この面での心電図が果たす役割についてはあまり重要視されておらず文献も少ない。しかし梗塞領域に心筋の残存があるとすれば,電気的な興奮現象は温存されているはずで,これを心電図的に捕らえることはある程度可能であろう。
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