Topics Respiration & Circuation
ドプラ法による左室拡張機能評価の応用
赤石 誠
1
1北里研究所病院内科
pp.317-318
発行日 1998年3月15日
Published Date 1998/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900074
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■最近の動向 心エコー図は形態学の診断から,心機能の診断へとその守備範囲を広げてきた.左室流入様式には,様々な因子が影響を与えているにもかかわらず,流入様式の解析により,左室の拡張機能がかなり明確に示されてきている.急速流入期の血液流入速度(E波)と心房収縮期の血液流入速度(A波)は,左房圧や左室拡張特性を反映していることが,カテーテルとの同時記録により証明されている.しかし,非侵襲的な心エコー図法により得られたこれらの指標が臨床的な意義をどの程度有しているかは未だ議論が多い.実際に臨床の現場でこの指標が幅広く用いられているとはいえない。急速流入期には,左室に血液が流入し左室は拡大するにもかかわらず,左室圧は低下する.左室の弛緩とリコイルが終了すると左室圧は血液の流入により増加しはじめる.このことが,左房左室圧較差を減少させ,急速流入期の持続時間を決定する.よってこの持続時問(減速時間)を決定している因子は,左室へ流入する血液量と左房と左室の伸展性である。減速時間が左室の固さの関数であることを実験的に実証した研究と,それらが実際に心不全患者の病態予後に密接に関連していることを示した研究を紹介する.これらの研究は,左室駆出率よりもドプラ指標が心不全の病態予後に対するより強力な予知因子であったということを示している.しかし,これらの指標は,血行動態を反映しているだけで,左室の心筋の特性を表わしてはいないのではないかという疑問は解決していない.
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