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はじめに
従来より欧米では虚血性心疾患を対象として抗不整脈薬の大規模臨床試験が行われてきており,長期予後に対する抗不整脈薬の効果が検討されている.日本での臨床試験では,比較的良性とされる心室期外収縮(PVC)に対する効果から抗不整脈薬の評価が行われてきた.対象としては重症の心疾患患者は除外されており,多くは基礎疾患のないPVC患者が選ばれてきている.しかしながら,PVC抑制作用からの評価は必ずしも長期予後を予知し得ない.強力な抗不整脈作用を持つ薬剤の中には逆に長期予後を悪化させるものがあり,期待されて登場した新薬の多くが催不整脈作用のため試験が中断されているのが現状である.
図1にPVCに対する抗不整脈薬の効果を示す1).I群薬ではPVC抑制効果はIc群薬が最も強く,次いでIa群薬で,Ib群薬が最も弱い.II群薬はIb群薬とほぼ同程度で,III群薬はIc群薬とほぼ同等の効果を示す.IV群薬はほとんど抗不整脈作用を示さない.もしPVC抑制効果がそのまま致死性心室性不整脈予防に結びついて突然死率を低下させるのなら,Ic群薬とIII群薬が最も心筋梗塞患者の予後を改善させるはずである.しかし,心筋梗塞後の患者に対する抗不整脈薬の予後改善効果を検討した多数の前向き研究のmeta-analysisによると(図22)),I群のNaチャネル阻害薬とIV群薬のCa拮抗薬は予後を改善せず,II群のβ遮断薬とIII群のamiodaroneが予後を改善する.さらにCardiac ArrhythmiaSuppression Test(CAST3,4))は,心筋梗塞後の心室性不整脈に対して強力な抗不整脈薬であるIc群薬を投与した場合に長期予後は逆に悪化することを明らかにした.以来,心筋梗塞患者における抗不整脈薬治療がいかにあるべきかが問い直されることとなった.
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