Japanese
English
特集 呼吸・循環器治療薬の狙いと効果の現実
βブロッカーと心不全
β-blocker Therapy in Heart Failure
北風 政史
1
,
苅田 真子
1
,
佐藤 秀幸
1
Masafumi Kitakaze
1
,
Michiko Karita
1
,
Hideyuki Sato
1
1大阪大学医学部第一内科
1The 1st Department of Medicine, Osaka University School of Medicine
pp.781-786
発行日 1996年8月15日
Published Date 1996/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900002
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
交感神経興奮は心筋β(β1)受容体を介して心臓に陽性変時作用,陽性変力作用,伝導促進作用などを発揮する.労作性狭心症や一部の不整脈では交感神経の陽性心臓作用が病態発現に中心的な役割を演じており,β遮断薬は古典的な治療薬となっている.一方,心不全では交感神経興奮は低下した心機能を維持するための重要な代償機序であり,β遮断薬は禁忌とされてきた.この常識を覆したのが1975年のWaagsteinらの報告であり,彼らはβ遮断薬を慎重に長期投与した結果,慢性心不全患者の自覚症状が改善することを見出した(表1の文献1)).最近の大規模長期臨床試験では延命効果も証明され,現在,β遮断薬は慢性心不全治療薬として非常に有望視されている.
本稿では,慢性心不全に対するβ遮断薬療法についての最近の動向を概説するが,まず心不全の病態形成における交感神経の役割について述べる.β遮断薬は,有害な交感神経作用から不全心筋を保護することにより長期的有効性をもたらすと考えられているからである.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.