Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
心臓突然死の遺伝子診断と病態解明に関する最近の話題
遺伝子診断が保険適応となっている遺伝性不整脈は,2016年現時点で,先天性QT延長症候群(long QT syndrome;LQTS)のみである.つまり,臨床診断されたLQTSのうち50〜80%と高頻度で遺伝子変異を同定可能であり,遺伝子型と表現型に相関関係(genotype-phenotype correlation)が証明されていることより,2008年4月1日付で保険診療(診断4,000点,遺伝子カウンセリング500点)が承認されている1,2).そして,その他の遺伝性不整脈に関しても遺伝子診断を日常臨床に導入し活用することは,近年の遺伝性不整脈研究の大きな目標の一つであり,本稿ではこれら最新の研究内容の一部を紹介する.
LQTSに関しては,さらに,不整脈発生機序の解明へ向けた研究が進められている.これまでに細胞レベルの実験によって,活動電位持続時間の延長と,早期後脱分極を生じるメカニズムが明らかにされてきた2,3).しかし,心臓全体での不整脈の発生と維持の機序は,十分に解明されていない.そこで,Kimらは,LQT1のトランスジェニック・ラビットを用いた動物実験で,多形性心室頻拍の再現を試みている4).この報告によると,両心室を起源とする多数の巣状興奮がQRSの変形を生じ,2つの興奮波が同時に発生することで頻拍が維持されている.この機序は,Changらが2012年に報告したin silico実験のシミュレーションで2つのspiral waveが頻拍を維持する機序に類似しており5),LQTSにおけるTorsade de pointesの発生様式の一つと考察されている.
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.