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はじめに
総務省消防庁の2013年報告では1)本邦における心肺停止患者の数は123,987人であり,そのうち心原性と思われるものは75,397人(61%),倒れるところを目撃された例は25,469人にのぼるという.心臓突然死による死亡例は1日200人を超えることになる.これら心臓突然死の対策としては自動体外式除細動器(AED)の使用が提唱されているところである.ところが,実際には目撃された例のうち,除細動が行われたのは全体の4%にとどまっていて心肺蘇生後の患者の生存率,社会復帰率は米国よりも低く低迷している.その原因は何か? 本邦におけるAEDの普及率に関しては2013年の集計では53万台が既に全国に配置されている.普及率は必ずしも低くはない.1つには,AEDの設置場所がわかりにくいことが挙げられる.人の集まるところでは比較的明確化されているが,通常の路上,商店街などでは十分に示されているとは思えない.また,AEDの問題点はAEDの作動スイッチを入れる人が必要であることである.AEDを作動させる勇気ある人がその場にいないと利用されないことになる.そのために,心臓突然死とAED使用に関する社会的啓蒙・教育がさらに必要とされているのが現状である.
一方,植え込み型除細動器(ICD)の有効性は,心停止,心肺蘇生歴を有する患者に対する2次予防効果,そのような既往を持たない心臓突然死リスクの高い例に対する1次予防効果ともに多施設共同研究により証明されているところである2).ところが,急性心筋梗塞直後,冠動脈バイパス術後や十分な薬剤治療がされていない心不全で左室収縮能が低下した症例など,心臓突然死リスクが高い病態でありながら,ICD植え込み適応とならない場合も知られている.それはICD植え込みによる全体的な有用性が確保できないことが理由であった.また,デバイス感染症でICD抜去後のようにICDの明らかな適応ではあるが,ICDを植え込めない状態も存在する.このような患者の心臓突然死に対応するために開発されたのがWCD(wearable CD)である3).本稿ではWCDの概要とその有用性・適応について概説する.
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