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綜説
DPP-4阻害薬は心血管イベントを抑制するのか—大規模臨床研究の結果から
DPP-4 Inhibitors on Cardiovascular Outcome:Lessons from Large-scale Clinical Trials
田中 敦史
1
,
野出 孝一
1
Atsushi Tanaka
1
,
Koichi Node
1
1佐賀大学医学部循環器内科
1Department of Cardiovascular Medicine, Saga University
pp.1015-1021
発行日 2016年10月15日
Published Date 2016/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404206050
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はじめに〜本稿の要約〜
糖尿病の最大の治療目標は,細小・大血管障害に由来する合併症を抑制し,その結果健康な人と同様なQOLの維持と健康寿命を確保することである.しかし,過去の多くの大規模研究からは,厳格な血糖コントロールにより細小血管障害の発症は抑制できたものの,大血管障害の発症を含めた生命予後を十分に改善できるかどうかは明らかになっていない.2008年に欧米では経口糖尿病薬の承認に当たり,心血管アウトカム試験による薬剤の十分な安全性評価が義務付けられた.本稿で取り上げるDPP-4阻害薬は,その時期に開発・上市が重なっていたため,同薬を用いた大規模試験の結果に大きな注目が集まった.その結果は,いずれの試験においてもDPP-4阻害薬はプラセボと比較して心血管リスクを増大させない,つまりDPP-4阻害薬の心血管系に対する安全性が証明されたのだが,プラセボと比較した優位性の証明までには至らなかった.その理由の一つとして,試験デザインそのものが優位性を証明するために設計されたものでなかったことに起因するのかもしれないが,果たしてDPP-4阻害薬は血糖コントロールの改善作用を超えた心血管系への保護的効果を有しているのだろうか.本稿では,DPP-4阻害薬を用いた大規模心血管アウトカム試験の結果を中心に,近年本邦より報告が相次いでいる心血管系サロゲートマーカーを指標としたDPP-4阻害薬の臨床研究の結果についてもフォーカスし,DPP-4阻害薬と心血管イベントとの関連について概説したい.
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