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特集 呼吸器疾患:症例から病態生理学/分子病態学へ
症例からみる非小細胞肺癌のprecision medicine
Precision Medicine for Non-small Cell Lung Cancer
津端 由佳里
1
,
礒部 威
1
Yukari Tsubata
1
,
Takeshi Isobe
1
1島根大学医学部内科学講座呼吸器・臨床腫瘍学
1Division of Clinical Oncology and Respiratory Medicine, Department of Internal Medicine, Shimane University School of Medicine
pp.976-984
発行日 2016年10月15日
Published Date 2016/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404206045
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はじめに
肺癌はわが国において罹患数・死亡数ともに第1位であり,2014年のデータでは年間死亡数は約75,000人と憂慮されるべき状態にあるうえに,今後も増加が予想されている.しかしながら,肺癌の分子生物学的な研究が進歩し,多種多様な分子標的治療薬が開発・使用されるようになったことに起因して,わが国の肺癌患者の予後は飛躍的に延長している.すなわち,今まで発癌のメカニズムは大腸癌のAPC(adenomatous polyposis coli),KRAS,TP53などに代表される多段階発癌説が提唱されていたが,単一の遺伝子変異のみで癌化するドライバー遺伝子変異の発見とそれに対する分子標的治療薬が開発され,その結果肺癌における個別化医療の道が大きく切り開かれた.なかでも,最大のターニングポイントはEGFR(epidermal growth factor receptor)遺伝子変異の発見であり,アジア人の変異率の高さにも後押しされ,日本からマイルストーンとなる大規模な臨床試験が複数報告された.
本稿では各患者背景の典型的な症例を紹介しながら,基礎研究の積み重ねの結実として現在肺癌治療の中心となっている分子標的治療薬の有効性を主に概説し,非小細胞肺癌におけるprecision medicineについて述べたい.
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