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特集 COPD合併肺癌:病因論から治療まで
肺癌診療専門内科医からみたCOPD
Lung Cancer with COPD:From the View Point of the Oncologist
小笹 裕晃
1
,
佐藤 晋
1
Hiroaki Ozasa
1
,
Susumu Sato
1
1京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学
1Department of Respiratory Medicine, Graduate School of Medicine, Kyoto University
pp.761-766
発行日 2016年8月15日
Published Date 2016/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404206008
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はじめに
近年,EGFR遺伝子変異陽性肺癌に対するゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブやALK融合遺伝子陽性肺癌に対するクリゾチニブの登場で,進行肺癌の化学療法は飛躍的な進歩を遂げている1〜3).さらに,これらの薬剤に対する耐性遺伝子を獲得した肺癌にも有効な分子標的薬が開発されている.EGFR阻害剤の耐性遺伝子であるT790M陽性肺癌に対して有効なAZD9291やクリゾチニブ耐性となったALK融合遺伝子陽性肺癌に対して有効なアレクチニブやセリチニブの登場で,さらなる生存期間の延長が期待されている4,5).しかしながら,EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子陽性肺癌は,非喫煙者に多く,喫煙者が圧倒的な割合を占めるCOPDを合併した肺癌患者がその恩恵を受けることは少ないと予想される.このため多くのCOPD合併肺癌患者に対する第1選択薬は,プラチナ製剤を含めた2剤併用の殺細胞性抗癌剤となり,多少の進歩はあるものの,10年前と比較して大きな変化がないのが現状である6,7).COPDは,当初の予測よりも早く,2012年WHO世界統計で世界の死因第3位に達しており,今後ますます重要となると推定され,今後COPDを合併する肺癌患者はより増加すると推測される8,9).本稿では,肺癌診療を専門とする内科医の立場から,COPD合併肺癌の現状と今後の展望について,自験データへの考察を加えて概説する.
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