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Current Opinion
急性心筋梗塞に対する再灌流療法の新展開と模索
New Horizon in Cardioprotection against Myocardial Ischemia/reperfusion Injury
佐野 元昭
1
Motoaki Sano
1
1慶應義塾大学医学部循環器内科
1Department of Cardiology, Keio University School of Medicine
pp.1223-1226
発行日 2015年12月15日
Published Date 2015/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205867
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心筋再灌流障害の概要と治療に関する最近の動向
急性ST上昇型の心筋梗塞に対して経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention;PCI)でいち早く責任血管の再灌流療法を行うことが梗塞サイズを縮小させる最も有効な治療法である.矛盾するようであるが再灌流療法自体が梗塞サイズを拡大させている.この逆説的な現象を心筋再灌流障害と呼ぶ.心筋梗塞のサイズは,虚血時の心筋障害と再灌流障害に伴う2次的な心筋障害の合計で決まる.
心筋梗塞サイズを収縮させる努力は,有害な左室リモデリングや心不全の発症を防ぐのに重要である.心筋細胞は再生できないため,心筋細胞を喪失してしまったらもはや治療法は臓器そのものを移植で取り合えるか,細胞移植によって補う(再生医療)しか治療法はない.適切なタイミングで再灌流療法が行われた場合,最終的な梗塞サイズの実に50%が心筋再灌流障害によって生じている.適切なタイミングでPCIを行ったあと,心筋再灌流障害を抑制することができれば,梗塞サイズをさらに50%縮小させることが可能である.心筋再灌流障害の分子機序が解明され,それに基づいた治療法が提案され,動物実験では有効な結果を残し,Proof of Principle studiesでも有望な結果が得られている.しかし,臨床的に心筋再灌流障害を縮小しようという試みはほとんどなされていない.
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