Japanese
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特集 膠原病に伴う循環器疾患
抗リン脂質抗体症候群と弁膜症
Antiphospholipid Syndrome and Valvular Heart Disease
野口 淳史
1
,
保田 晋助
1
Atsushi Noguchi
1
,
Shinsuke Yasuda
1
1北海道大学大学院医学研究科内科学講座免疫・代謝内科学分野
1Division of Rheumatology, Endocrinology and Nephrology, Hokkaido University Graduate School of Medicine
pp.1051-1055
発行日 2015年11月15日
Published Date 2015/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205839
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背景
抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome;APS)は,抗リン脂質抗体(antiphospholipid antibodies;aPL)と関連する自己免疫性の動静脈血栓症および妊娠合併症を来す疾患である1).APSにおける心合併症としては,虚血性心疾患が一般人口と比べ高頻度とされ,欧米ではAPSにおける心筋梗塞の合併率が5.5%と報告されている2).またAPS患者において,心臓MRI(magnetic resonance imaging)で同定される虚血性心疾患の頻度は,同程度のリスク因子を持つ非APS患者の7倍であったとの報告もある3).一方,それ以上に高頻度に発生するのが心弁膜症である.心エコーでの検討によると,APSにおいて35〜82%に弁膜症を合併すると報告されている4〜6).最もよくみられるのは弁膜肥厚であるが,疣贅や弁狭窄,弁逆流もしばしばみられる.罹患部位は僧帽弁が最も多く,大動脈弁がそれに次ぐとされている.多くは軽症であり,症候性のものは5%に過ぎないが,APSにおける心弁膜症は,動脈血栓症,特に脳血管障害と関連するとされており7,8),弁膜症の存在自体が血栓症の発症リスクになることを示唆している.
一方,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus;SLE)を母集団とすると,心エコーで同定される弁機能異常は50%以上に存在すると報告されている9).なかでもSLEおよびAPSに合併する病態としてLibman-Sacks心内膜炎が知られている.
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