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はじめに
皮膚には定常状態においても樹状細胞やT細胞,マクロファージなど多種多様な免疫担当細胞が存在する.ひとたび病原体など外界からの異物が侵入すれば,生体はこれを排除するため様々な免疫反応の誘導や惹起を開始する.従来,これらの免疫反応における細胞動態や局在・細胞間相互作用の解析には,組織切片を用いた免疫組織学的解析や,培養細胞を用いた解析が主流であった.これら解析法の利点としては,例えば免疫組織学的解析であれば,試料の保存が可能であるため解析がいつでも可能であり,また複数の染色が可能であるため,抗体や試薬を工夫すれば,様々な分子の局在や細胞間相互作用などの情報収集がある程度可能である.しかし,免疫反応を含む様々な生命現象は,刻々と変化する極めてダイナミックな現象であるため,現象のある一時点しか捉えない組織学的解析には,その動態解析の正確さに限界が生じる.培養細胞を用いた動態解析は,様々な条件を人為的に操作できるため,詳細なメカニズム解析に適している.しかし,実際の細胞動態・活性化状態は細胞周囲の構造にも大きく左右され,さらに生体内では複数の細胞が複雑に絡み合って最終的な免疫反応を形成するため,細胞培養系の解析から得られる知見が,生体内での現象を正確に反映するかどうかは,生体内での細胞動態・機能変化を実際に観察し,検証する必要がある.多光子励起顕微鏡は,生体内での細胞動態をリアルタイムでイメージング観察できるため,そのような従来の課題に応えることができる,優れたツールである.
本稿では,多光子励起顕微鏡の原理について簡単に解説し,同顕微鏡を用いたライブイメージングにより明らかとなった皮膚免疫反応制御機構について,エフェクターT細胞について焦点を絞り,最近のわれわれの研究成果を紹介する.
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