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はじめに
近年,エクソソームなどを含む細胞外顆粒(extracellular vesicles;EVs)が,新たな診断,治療ツールとして注目を集めている.この分野の研究は,原因恒常性と疾患病理生物学の基礎となる細胞プロセスにおけるEVsの役割の増加の認識により,過去10年間で劇的に増加している.EVsの歴史は約30年前に始まる.Johnstoneらは,ヒツジの網状赤血球が細胞外に〜50nMの粒子を放出することを報告し,これを後に“exosome”と命名した1).一躍注目を集めることとなった発端は,2007年にJohn Lötvallらがexosome内にmicroRNAやmRNAが存在し,microRNAの細胞間輸送に利用されている可能性があることを報告したことによる2).ヒトmiRNAは約1,800種の前駆体と2,500種類の20mer長の成熟microRNAが存在しており,microRNAは塩基配列特異的にmRNAの3'非翻訳領域に相補的に結合し,タンパク翻訳をpost transcriptionのレベルで阻害し,遺伝子発現を制御している.このようなmiRNAがEVsを介して細胞間を移動し,細胞間のコミュニケーションに利用されているということは,すなわち,EVsは生体情報を含む魅力的なバイオマーカーとして利用可能であること意味し,また,治療への応用が期待できることを意味していたからである.この領域の研究は,マススペクトメトリーをはじめとするプロテオミクスの技術の進歩や,次世代シークエンス技術の進歩を背景に,OMICS技術の進歩がEVs研究をさらに活性化されている.
特に,EVs内RNA(extracellular vesicles RNA;evRNA)は,レシピエント細胞の細胞内情報を含んでいることから,新たなバイオマーカーのソースとして注目を集めている.evRNA内には,遺伝子のコーディング領域(mRNA)以外にも,イントロン領域や遺伝子間領域など,前述のmicroRNAを含め,非コード領域の遺伝子を多く含んでいる.これらevRNAがどのようなメカニズムによって細胞外顆粒内にソートされるのか,これらがどのような生物学的な役割を担っているのかについては,未だ明らかにされていない.本稿では,evRNAのバイオマーカーとして臨床応用するための試みや解析方法などを検証し,最近の進歩から技術的限界など,その将来性を探る.
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