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特集 IPF治療の最新の話題
慢性安定期IPF—ステロイド,免疫抑制剤の適否
Chronic Stable IPF:Indication of Steroid or Immunosuppressant
國保 成暁
1
,
吾妻 安良太
1
Nariaki Kokuho
1
,
Arata Azuma
1
1日本医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野
1Department of Pulmonary Medicine and Oncology, Graduate School of Medicine, Nippon Medical School
pp.123-126
発行日 2015年2月15日
Published Date 2015/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205633
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はじめに
従来よりIPFは肺間質を主体とした慢性炎症が肺局所で維持されることで,線維化に至ると考えられてきた1).この仮説に基づき,不可逆的な組織障害が惹起される前にこの炎症性カスケードを遮断することを目的に,抗炎症作用(炎症性サイトカイン・ケモカイン,接着分子などの産生抑制)を期待してステロイドや免疫抑制剤が使用されるようになってきた2).しかしながら,これらの薬剤は長期に渡って使用されてきたものの,抗炎症作用を狙った薬物治療の効果は,先のPANTHER-IPF(Prednisone+Azathioprine+N-Acetylcysteineの3剤併用療法)では無治療(プラセボ群)との無作為化ランダム比較試験において,予後を悪化させる結果であった3).
近年の分子生物学的解析の進歩により,逐次的な肺胞上皮細胞傷害と損傷修復異常が,線維芽細胞増生や細胞外マトリックス沈着といった線維化を引き起こすと理解されるに至っている.このような背景により,現在開発され始めている治療薬の多くは抗炎症作用から抗線維化作用をターゲットにしたものへとシフトしてきている.
一方,本邦の「手引き」は,2000年のATS/ERS consensus statementを基盤に構成され4),ステロイドと免疫抑制剤の併用療法は暫定推奨治療と位置づけられている5).本稿ではPANTHER-IPFの結果を踏まえ,2011年のATS/ERS/JRS/ALAT Statement6)を中心に,従来より行われてきた慢性安定期IPFの「ステロイド・免疫抑制剤治療」の適否について概説する.
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