今月の臨床 妊娠と薬物―EBM時代に対応した必須知識
妊産婦,授乳婦人での薬物の選択と投与法
5.副腎皮質ステロイド,免疫抑制剤
吉田 幸洋
1
1順天堂大学医学部附属順天堂浦安病院産婦人科
pp.686-689
発行日 2003年5月10日
Published Date 2003/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100927
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はじめに
母体に薬剤が投与される場合として,妊娠中に生じた偶発合併症に対する治療として薬剤の使用が考慮される場合のほかに,もともと慢性疾患で治療を受けていた患者が妊娠し,妊娠中も,妊娠前からあった疾患の治療を継続しなければならない場合が考えられる.さらに特殊な場合として,胎児に対する治療を目的に,薬物の経胎盤的移行を期待して,母体に当該薬物が投与される場合もある.
副腎皮質ステロイド(グルココルチコイド,コルチコステロイド : CS)や免疫抑制剤は,種々の自己免疫疾患やリウマチ性疾患などで用いられる薬物であり,強力な抗炎症作用と免疫抑制作用を有する薬物である.したがってこれらの薬物は,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus : SLE)や関節リウマチ(rheumatoid arthritis : RA)といった疾患で薬物治療中の患者が妊娠した場合に,使用の継続について考慮しなければならない薬剤ということができる.
一方,ある種の副腎皮質ステロイドは,胎児に対して肺や脳といった重要臓器の成熟を促進する効果があることが知られており,早産未熟児の出生が予想される場合に経母体的に投与される場合がある.
本稿では,副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤が投与されていた患者が妊娠した場合を想定し,これらの薬剤の胎児への影響や母乳移行による新生児への影響について解説し,妊産婦への投与上の注意点について述べてみたい.
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