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強心剤ジギタリスの薬効機序
後藤 秀機
1
,
柴山 理恵
2
,
上山 章光
2
1岩手医科大学医学部第一生理
2帝京大学医学部第二生理
pp.744-745
発行日 1994年8月1日
Published Date 1994/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906598
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ポンプ作用の弱くなった心臓には,各種の強心剤を使ってその収縮力を増強する.その中で最も有名なものにジギタリスがある.主として植物から採れる配糖体で,2000年の昔から世界中で利用されてきた.その薬効機序に関しては,次のような仮説が一般的であった.すべての動物細胞には,その表面にポンプが存在して,細胞内からナトリウムをくみ出している.ジギタリスは,このポンプ(Na,K-ATPase)に選択的に結合し,ポンプを止める.したがって,細胞内ナトリウムの濃度が上昇する.次いで,ナトリウム-カルシウム交換輸送によってナトリウムが細胞外に輸送されるのと交換にカルシウムが細胞内に入る.このようにしてカルシウム濃度が増加するので,収縮力が大きくなるとされてきた.一方,ジギタリスは各種平滑筋を収縮させる.これは,プロスタグランジンを介して引き起こされることが判明している.すなわち,ジギタリスがリン脂質分解酵素(ボスホリパーゼA2)を活性化し,セカンドメッセンジャーを介して収縮を引き起こすのである.また,心筋細胞についてもジギタリスによりリン脂質分解酵素(ホスホリパーゼC)が活性化されることも報告されていた1).これらの事実をヒントに,われわれは,ジギタリスが心筋でもリン脂質の分解産物であるセカンドメッセンジャーを介して収縮力を増強するのではないかと考えた.
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