巻頭言
今後の呼吸器病学
吉良 枝郎
1
1順天堂大学呼吸器内科
pp.117
発行日 1989年2月15日
Published Date 1989/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205414
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American Review Respiratory Diseaseの8月号に,ATSは1989年7月から本誌とともに,本誌のcompan-ionとしてと表現しているが,American Journal of Re-spiratory Cell and Molecular Biologyを創刊することをアナウンスしている。この20年来の呼吸器病学における細胞および生物学(biology)の面からの基礎的研究は大きな進歩を見せ多くの新しい知見が集積された。呼吸器疾患の成立の機序を解明し,さらに治療を前進させるためには,従来の研究に加えての新しい分野における研究を推進し,本学会員をこの面からも啓蒙する事が必要であり,この新しいJournalを創刊する理由もててにあるとしている。
表面活性物質がトピックであったが代謝臓器としての肺の問題が国際生理学会で取り上げられたのが1968年,ReynoldsらがBALを導入したのが1974年であった。さらに最近は肺癌のオンコジンの問題肺胞マクロファージからのIL-1,繊維芽細胞増殖因子の分泌など種々の生物活性物質の面からのサルコイドーシス,間質性肺炎成立機序への洞察,気管支上皮細胞の培養などの新しいトピックが続々と展開しつつある。ての1980年代にはいっての,呼吸器病学における生理学から細胞,生物学への急速な変遷をひしひしと感じていなかった人は恐らくいないだろう。これらを見ると,この新しいJournalの創刊はAm Rev Respir Disの編集者の言うとおりごく当然の事として受け止めるべき事柄なのだと思う。
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