巻頭言
循環器病学の今後の展開
横山 光宏
1
1神戸大学医学部内科学第一講座
pp.969
発行日 1999年10月15日
Published Date 1999/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901969
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ここ20〜30年間の循環器病学の進歩は目を見張るものがある.特に,各種心電図法を含む電気生理検査,心血管系の超音波,心臓核医学,CT,MRI,心臓血管造影などの画像検査法の進歩によって心血管病の診断は急速に進歩した.また循障器医薬品の開発,臨床応用も目覚ましく,例えば,β遮断薬,Ca拮抗薬,ACE阻害薬,HMGCoA還元酵素阻害薬,抗血小板薬など枚挙にいとまがない.一方,循環器病学は従来から心血行力学,電気生理学,生化学,病理形態学,医用工学など種々の研究手法を用いて,多くの研究成果を挙げ,心血管病の病態の解明に大いに貢献してきた.特に,生理学は心臓と血管の機能制御およびその異常を明らかにする中心的な研究手法として重要な位置を占めてきた.
近年の生命科学の進歩は驚異的であり,それは分子生物学,発生工学,遺伝子工学などの学問の進歩に負う所が大である.線虫の遺伝子は1998年に全てクローニングされ,その構造と機能の関係が詳細に調べられている.また,マウスでも特定の遺伝子を壊すノックアウト・マウスや特定の遺伝子を特定の臓器,組織に過剰発現させるトランスジェニック・マウスを作成し,その機能の解析が広く行われている.ヒトゲノム計画は,ヒト染色体すなわち30億塩基対のDNAの全配列の解明が目標であり,1990年秋に米国でスタートしたが,フランス,イギリスなどのヨーロッパ諸国とわが国でも精力的に取り組まれているのは先刻承知の通りである.当初2010年までとされたが,2003年までにほぼその目標が達成される見通しである.最近の報告では米英の研究グループは2000年春までに90%の解読を終える予定と発表している.
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