Japanese
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綜説
「急性心筋梗塞症」の発症機序と線溶療法の意義—冠状動脈内血栓の役割を中心として
Pathogenesis of acute myocardial infarction and effectivenesss of coronary thrombolysis
木全 心一
1
,
広沢 弘七郎
1
Shin-ichi Kimata
1
,
Koshichiro Hirosawa
1
1東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所内科
1The Heart Institute of Japan, Tokyo Women's Medical College
pp.361-372
発行日 1987年4月15日
Published Date 1987/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205035
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心筋梗塞との病名は,病理上の概念であり,冠状動脈が閉塞し心筋が壊死に陥ったものと定義されている。一方,臨床医は来院した患者を,病理上の変化を見ない前に胸痛,心電図変化,心筋逸脱酵素の動きから,臨床的に「急性心筋梗塞症」との診断を下しており,両者が同一かについて現在検討段階である。「急性心筋梗塞症」の発生機序は,他分野での研究や進歩も手伝って多方面から検討が進んでいる。冠状動脈造影による器質的狭窄と冠攣縮の検討,心筋虚血時の心筋代謝やCa代謝の研究,血液凝固系,血小板,アラキドン酸代謝物質など多彩な研究がなされている。これらの研究から浮かび上がってくる「急性心筋梗塞症」の病態生理は,単に冠状動脈を結紮した時とは異なり,実にダイナミックな変化で興味深い。
この間に産生される物質は,冠攣縮を誘発したり,心筋障害を生じたりしている。また,虚血にさらされた心筋では,Caの急速流入によると考えられるミオフィラメントの過収縮による破壊が進み,ミトコンドリアの崩壊によるエネルギー代謝の障害,他の細胞構造の破壊へと進んでいく。また心筋を栄養している冠状動脈内では,血栓形成を促進する力と阻止する力とが攻めぎあいをしている。これらの機構のどこかにある引金が働き,連鎖的に病変を進ませているのか,強力な力が心筋にいきなりカタストロフィ化変化を生じているのかは依然として不明だが,これらからの研究の成果に待つところが大きい。
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