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はじめに
肺・気道系のレセプターの研究の歴史では,Paintal,Widdicombeによるパイオニア的仕事があり,それらは彼らの優れた総説1〜3)としてまとめられてきている。本稿では,彼らの研究以降の動き,あるいは,彼らとは違った視点から肺・気道系のレセプターを扱った研究を中心に,情報を整理した。なかでも特に注目されることは,肺迷走神経の求心性線維のうちで,数は最も多いにもかかわらず,その生理的特性あるいは呼吸調節における役割が不明瞭であったC線維について,その清報が急速に増加していることである4)。もう一つの注目される動きは,上気道とくに喉頭や咽頭のレセプターの研究が,睡眠時無呼吸との関連から徐々に蓄積されてきていることである5)。また,気道系のレセプターの機能的意義については,Hering-Breuer反射に代表されるような,呼吸リズムや換気運動の制御を中心とした解析から,最近は,気管支平滑筋の反射性調節に示されるような,上気道の制御の研究に,関心が移行してきている傾向がある6,7)。
また,新しいデータの蓄漬に伴い,肺・気道系の各レセプターに対する名称にも変遷が認められる。例えば,肺伸展受容器(pulmonary stretch reccptor,PSR)8)は,slowly adapting stretch receptor (SAR)9)の用語の方が,よりレセプターの性質を正確に表現しているとされ,後者の名称を用いる研究者6,10)も多い。それに対応して,刺激受容器(irritant receptor)も,rapidly adapting stretch receptor (RAR)9)とよび.咳受容器(cough receptor)をRARと同一の範疇に含める考え方もある6)。一方,肺迷走神経C線維の知見が増すに従って,従来より知られていたJレセプター1)は,肺性C線維(pulmonary C-fiber)4)に含め,さらに.肺性C線維と気管支C線維(bronchial C-fiber)とを比較して解析する方向にある4)。なお,本稿では,肺伸展受容器,刺激受容器,肺迷走神経C線維の名称を用いることとした。その理由は,漢字から受けるイメージが理解しやすいという,筆者の主観による選択であることをお断りしておく。
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