巻頭言
薬物効果の評価
杉本 恒明
1
1東京大学医学部第二内科
pp.987
発行日 1984年10月15日
Published Date 1984/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404204520
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日本心臓財団の発行する"健康ハート"第6号誌上に,軽症高血圧の長期薬物治療に関する臨床研究への協力のお願いがある。軽症高血圧治療の要否はこれまで主として外国での成績,経験にもとづいて論ぜられてきた。そこで,本邦においてもこの問題を多施設共同で5年間,約5億円の予算で検討することが計画され,これに対する財政的援助が訴えられたものである。
高血圧に限らず,狭心症や心筋梗塞などに対する薬物の長期投与がどの程度の意味をもちうるかについて,諸外国にはいくつかの大がかりな仕事がある。例えばBHAT (β blocker heart attack trial)やAMIS,PARISなどといった報告が有名である。しかし,本邦ではこの種の研究は皆無といってよい。莫大な費用,膨大なエネルギー,長い期間を要するためにとても製薬企業のなしうるところではなく,しかもこれを試みようとする公的機関による計画もなかったからである。
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